破産手続きはもっとも効果的に債務をなくす手続きであり、実際に多くの方が選択されている手続きであるにもかかわらず、初めて相談にいらっしゃる依頼者は「破産はしたくない」とのご意見をお持ちであることが多々あります。
自己破産すると今後の生活はどうなってしまうのか?
以前のようなまともな生活が送れないのではないか?
自分や家族が不利益に扱われるのではないか?
子供の将来や結婚に関わるのではないか?
近所や職場に知られてしまうのではないか?
自己破産の申立てを考えている方のほとんどは、このような不安をもっているのではないでしょうか。
そのような不安の中には、正確な知識がないがゆえの誤解が多く含まれます。
まずは、のご相談者から多くお問い合わせがあった内容についてご説明いたします。
家族や近所の人たちへの影響を心配することで破産に踏み切れない方が多くいらっしゃいますが、その殆どは誤解に基づくものです。
自己破産することによって家族の財産が取られてしまうわけではありませんし、勤務先や近所の人たちに知られるということはありません。
同居の家族についても、その方の財産が没収されるようなことはありません。また、なるべく会社に知られず破産の手続きを勧めることもできますし、仮に偶然会社がそれを知ったとしても、破産したことをもって従業員を解雇することは認められていません。
自己破産をすると財産についてすべて取り上げられてしまうという訳ではありません。
不動産・価値の高い一部の乗用車・退職金の一部などは債権者に配当されますが、殆どの家財について影響がありません。 また現金についても、ある程度は手元に残ることが多いと言えます。
破産免責とは、これ以上支払いをする責任がないことを公に認めて貰う手続きです。
従って、免責が出た後は、何の制約もない状態で再スタートを切れるというのが原則です。
従って、破産したことが戸籍や住民票に記載されたり、選挙権がなくなるというようなことは一切ありません。
また、仮に破産手続きが終了していなくても、家族や家計が裁判所に管理されてしまうことはありませんし、債権者から直接責め立てられるようなことはありません。
自己破産手続は、他の債務整理(借金整理)に比べれば、何かと制限が多いことは事実ですが、申立人の人格権が否定されるような制限はありません。
1.信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に情報が載ってしまうことにより、以後の借入れができなくなる(債務整理、民事再生についても同様です)
2.一定の財産については債権者に配当されてしまう。具体的には次のとおりです。
(取り上げられてしまう財産の例)
不動産(土地・マイホーム・別荘)
裁判所で認められた額を超える現金
20万円を超える預貯金
20万円を超える株券、ゴルフ会員権などの有価証券
20万円を超える生命保険の解約返戻金
20万円を超える価値がある自動車
受給予定退職金額の1/4~1/8の額が20万円を超える場合、その受給予定退職金の1/4~1/8の額(裁判所によって割合が異なります)
3.免責手続期間中においては、市役所発行の身分証明書にその旨の記載がされる
(但し、原則本人からの請求でないと取得できない)
4.一定の資格制限があるため、一部の職業に就けない。
(但し、免責許可決定の確定により資格制限はなくなります。)
(資格制限の例)
5.官報に載ってしまう (民事再生も同様です)
破産には同時廃止事件と管財事件の二つがあります。その違いと場合分けは下記の通りです。
大多数の手続きはこちらです。
本来法律が定めている原則的な手続きは、下記の管財事件なのですが、殆ど財産と呼べるものがない破産のケースでは、あえて管財人をつけて分配の手続きを取る必要性が薄くなってしまいます。
そこで、財産がない場合には、管財人を選任せず、裁判官との面談をもって、次の免責手続きに移行してしまう手続です。
実際には、破産に至る方は既に殆ど財産と呼べるものが残っていないことが多く、冒頭で述べたように多数の事件は同時廃止ということになります。
破産者に財産があり、公平な配当が必要と考えられる場合(不動産や金融資産がある場合です)には、管財人が選任され、財産の換価処分等の手続を行う手続です。
管財人の報酬は破産者が裁判所に納める必要があり、最低20万円程度を見込まねばなりません。